食道裂孔ヘルニア
GERDの原因としてもう一つあるのが食道裂孔ヘルニアです。
食道と胃の境近くにある横隔膜の構造は、さまざまな影響を受けやすく、お腹の中の臓器が横隔部の一部から突出することがあります。そう聞くとちょっとびっくりしますが、食道のあたりでは比較的よくみられます。
横隔膜には食道が通る部分(食道裂孔)があり、胃と食道の結合部が横隔膜より上に少し滑り出てしまうことがあるのです。これを食道裂孔ヘルニアといい、消化機能障害、心疾患、更に肩、頚部、顎関節の痛み、また嚥下障害、しゃっくりなどに関わってきます。このテーマでお話している、逆流性食道炎にも関連していることが多く、胃の内容物の逆流の刺激により、胸やけの他にも頚部、背部、顎関節、耳、口、肩、腕などに放散する痛みが起こることもあり、場合によっては食道炎を起こします。
この食道裂孔ヘルニアに嚥下障害はよくあることで、食べ物が喉を通るときに胃の直前で詰まるような感覚や何かボールがつかえているような感覚があったり、一度にたくさんの食べ物を食べると症状が悪化します。この場合は、食べるものの種類ではなく、食べ物の量自体が原因となります。
大量の食べ物の摂取以外には、「姿勢との関わり」でもお話した食後に横になることで症状が悪化したり、重いものを持ち上げたり、力む、きつい衣服の着用、食後に身体を曲げるなどの動作ではつらくなる人が多く、逆に姿勢をよくすると症状が落ち着くことがあります。思い当たる人は要チェックですね。
この裂孔ヘルニアのなりやすい年齢は40~70歳くらいですが、若い人にみられる場合もあります。
胃の痛みや胆のうの痛みと似ていることが多いので、すぐに胃薬を飲んでしまう人もいますが、簡単に胃酸を抑えてしまう薬を飲んでしまうと消化機能が低下して、逆に様々な問題が出てくる場合も多いので、注意してくださいね。
逆流性食道炎とカイロプラクティック
カイロプラクティックでは、重度の慢性状態でなければ治療を行うことで、効果を出すことができます。
治療は、横隔膜部分から呼吸を使いながら、ゆっくりと食道と胃の結合部を押し下げるような方法で行います。
また胃の内容物(胃酸、ペプシン)の逆流は、食道の胃に近い部分(食道裂孔近く)の括約筋がしっかり働いていない場合が多く、この機能を補助している横隔膜を治療することもあります。
急性の障害では、この治療直後に症状の緩解が得られる場合が多いです。ただ慢性的になると、長期間治療が必要なケースもあります。その他、長期の肝機能障害で横隔膜の機能が低下し、食道裂孔ヘルニアを誘発する場合があるので、肝機能の状態もチェックする必要はあるでしょう。
普段の生活で患者さんに注意してもらいたいことは・・・
食事中、背筋をしっかり伸ばして食事をとること。
また一度に飲み込まず、よく噛んで食べること。
食後にすぐによこにならないこと。
また、肥満などがみられる場合には、それが悪化要素ともなるため、体重減少が必要になる場合もあります。
また横になったときに症状が悪化する場合は、睡眠時のベッドの頭部を20~30㎝上げるなどの工夫が必要になります。
またサプリメントによるアプローチをすることもあります。
その一つはコリンです。コリンは身体の中でさまざまな機能を受け持っていますが、その最も大切な機能は、神経伝達物質のアセチルコリンの原料になるということです。コリンを摂取することで、体内のアセチルコリン合成量を増やせることがわかっています。筋肉の細胞膜にあるアセチルコリンのリセプターの数が減少していくことで、筋肉が弱ってしまうことがあり、食道括約筋の機能に関して、臨床研究を行っている Dr Castell Donald はアセチルコリンに似せてつくった合成薬で、食道括約筋の圧力が高められることを発見しています。その結果、胃酸の食道への逆流量は減り、胸やけの症状が軽減されたと報告しています。
もう一つのサプリメントにレシチンがあります。レシチンは、血液中のコリン濃度を長時間にわたって高めることができます(コリンはレシチンの構成成分の一つでもあります)。
このことでレシチンは、多くの患者さんに効果があると言われています。
慢性的に胸やけをする患者さんの中には、括約筋の働きを妨げる原因(括約筋を緩める食べ物、高脂肪食、喫煙、食事姿勢など)がなくても、食道括約筋自体の機能に障害がある人もいます。また長期の肝機能低下ではヘルニアが起こりやすいともいわれてます。
こういった場合は、サプリメントで括約筋の圧力を高めたり、カイロプラクティックで括約筋や横隔膜の機能をあげてあげることも有効な手段かもしれません。
コリンやレシチンのどちらもサプリメントで摂る場合は、大豆由来なので、大豆のアレルギーがないことが前提となります。
次回は、私が思う「逆流性食道炎の本当の理由」にお話しますね。お楽しみに〜。
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