牛乳は身体に良いのか!?
戦後日本では、「牛乳は完全栄養食品である」といわれてきました。
その理由は「身体が必要とする栄養素をすべて含んでいる、すぐれた食品」だからということです。
「牛乳は自然の恵み」
「牛乳は完全栄養食品」
「牛乳はみんなに必要」
こんなキャッチフレーズを聞いたことありませんか?
誰もが、疑いもなく牛乳は身体に良いと思っているのではないでしょうか。
そしてそのように育ってきたでしょう。
子供のころは大きくなるように牛乳をいっぱい飲むことを勧められ、学校の給食では毎日のように牛乳が出ます。牛乳は苦手なのに、子供の頃、学校で飲みなさいと言われて、鼻をつまんだりして無理に飲んだ経験がある人もいるのではないでしょうか。
また大人になっても最適のカルシウム源として、家庭の冷蔵庫には必ずといっていいほど牛乳があります。そしてお腹のために、毎日欠かさずヨーグルトを食べる人もたくさんいるのではないでしょうか。
牛乳や乳製品を歴史的に摂る習慣のなかった国で、こうした食品がこれほど根付いているのは日本だけといわれています。
しかし、全米で注目を集めている「責任のある医療のための医師の会」では、「動物性たんぱく質は血液を酸性に傾けるので、身体はそれを中和するためにカルシウムを骨から引き出す」と説明し、「(動物性たんぱく質を多く含む)牛乳を飲んでカルシウムを摂取しても骨粗鬆症の予防には役立つという科学的根拠はない」と明言しています。
また、最近になって、多くの医師と国民が、長年にわたり人々の意識に刷り込まれた牛乳の価値を疑問視するようになり、近年、アメリカでは多くの医師が牛乳・乳製品の健康被害に警鐘を鳴らしています。連邦取引委員会までがこの点を再検討するようになっているのです。
乳糖不耐症
世界の成人人口の70%は牛乳中の糖質「乳糖」を分解できません。
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして、すぐ下痢をしてしまったりしませんか?
また胃痙攣をおこしたり、腹部膨満感があらわれたり・・・
その原因こそが、実は「乳糖不耐症」と呼ばれるものなのです。
「乳糖」とは、牛乳に含まれている糖質(炭水化物)のことです。乳糖は二糖類で、ブドウ糖とガラクトースという二つの単糖類から構成されています。
乳糖は、乳腺の腺細胞だけでつくられます。したがって、乳糖を含んでいる物質は哺乳類の乳汁の他には存在しません。乳糖やその他の糖類をいっさい含まない乳汁を分泌する哺乳動物は、アシカ、アザラシ、オットセイ、セイウチだけです。1リットルあたりの乳糖の含有量は、人乳で約75g、牛乳で約45gです。
牛乳を飲んだ後で、乳糖が腸管から吸収されて血液に流入するには、二つの単糖類にまず分解されなければなりません。それには、乳糖を分解する酵素である「ラクターゼ」が必要になります。ラクターゼは腸管の上部の細胞に存在し、それが最も多く集まっているのが、小腸の中ほどにある空腸と呼ばれる部分です。
人間の母乳にも乳糖が含まれているため、赤ん坊のときは誰でもラクターゼを持っています。ラクターゼの活性がはじまるのは妊娠第三期(7ヵ月以降)の胎児の腸管の中で、活性が最も盛んになるのは出生直後と言われています。しかし、生後1年前後の離乳期からラクターゼの活性が弱くなりはじめ、成人になるとラクターゼがほとんど活性しなくなります。
摂取する乳糖の量が多くて腸内でのラクターゼの処理能力を超えると、乳糖は消化されないまま大腸に運ばれます。未消化の乳糖が大腸に到達すると、2つのことが起こります。
①大腸に普段から生息する細菌に乳糖が反応します。
細菌は乳糖を発酵させて、ガス、二酸化炭素、乳酸に変化させます。
②乳糖の分子は浸透圧作用によって腸管内に水分を引き寄せます。
その結果、腸管内にたまるガスと水分の量が増えます。
ガスと水分の組み合わせは、腹部膨満感、痙攣、げっぷ、放屁症状、そして水様性下痢の原因となります。
牛乳を飲んでお腹を壊してしまうメカニズムはこういうことだったのですね。
1965年、ジョンズホプキンス大学医学部の研究グループが、被検者となった白人の15%、黒人の70%が乳糖を消化できないことを発見し、これをキッカケに世界中の人々を対象とした調査が行われ、おどろくべきことがわかりました。
人類の大多数は乳糖不耐だったのです。
ほとんどの子供の小腸におけるラクターゼの活性は、生後1年半から4年の間に徐々に低下します。これは成長過程における正常な生理的変化です。
これと同じ現象は、離乳期に至ったほとんどの哺乳動物にもみられます。
この点では人も他の哺乳動物とまったく同じなのです。
生存のために牛乳に依存しなければならない部族は、自然淘汰の過程でラクターゼの分泌を維持する突然変異を起こす確率があります。また北欧のごく一部の人々はラクターゼを合成できる遺伝子を持っています。しかし、世界のほとんどの地域の人、特にアジア系やアフリカ系の人(有色人種のほとんど)が成人になるとラクターゼを作る働きが弱く、これらの人種の80~90%が乳糖不耐症であることが明らかになっています。
通常の離乳期を過ぎても、牛乳のような乳糖を含む食品を摂取するのは明らかに自然の摂理に反しているのかもしれません。
ラクターゼの欠損が成長過程における一般的なパターンだとすれば、乳児期を過ぎても乳糖を消化できる人はかなり例外的な存在といえるのではないでしょうか。
健康な成人における乳糖不耐の割合は、アメリカの白人で8%、黒人で70%、日本人では85%にのぼります。
日本人のほとんどがこの「乳糖不耐症」なわけですね。
ちなみに「乳糖不耐症」のために牛乳が苦手な人でも、大丈夫な乳製品があります。
それはヨーグルトやチーズ。
なぜかというと・・・
細菌の力を借りることによって牛乳を発酵させてヨーグルトやチーズにすると、乳糖の多くを細菌がブドウ糖とガラクトースに分解してくれるので、乳糖による問題は発生しなくなるからなのですね。
乳糖不耐症の人はとくに「牛乳」は飲まない方が賢明かもしれません。
そしてお腹をよく壊してしまうお子さん。
もしかしたら、乳糖不耐症が関わっているかもしれません。
子供の腹痛はかなりよくある現象です。
全体の一割の子供が「小児再発性腹痛」と呼ばれる症状を経験していると推測され、その子供たちを対象にした研究では、その約三分の一の子供の腹痛が乳糖不耐に起因しているといいます。
牛乳を飲むことが良いという認識だけで、給食に毎日出たり、積極的にすすめられたりしますが、これは子供の健康を害するだけでなく、アレルギーの元になる可能性すらあります。
人類の大多数が「乳糖不耐症」であるということ。
これはまぎれもない事実なのです。
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